下関市豊北町で地元の人と移住者を繋ぐ、“ほうほく裏の観光大使”

郵便局長でありながら地元を盛り上げる活動も

下関市豊北町にお住まいの妻崎和雅さん。高校卒業後から地元の郵便局に勤め、現在では、JR阿川駅のそばにある郵便局に勤めています。それに加えて、豊北地区まちづくり協議会の会長も担う、“ほうほく裏の観光大使”でもあるのです。

斬新なアイデアで豊北町に活気をもたらす

妻崎さんは、豊北町を盛り上げるため、これまで数多くのプロジェクトに携わってきました。その一つが、角島大橋の開通20周年を記念した切手作りです。もともと地元観光協会で大きな記念式典を考えていましたが、新型コロナウイルスの流行で実現できなかったため、郵便局に勤めていることを活かして、記念切手を作ることに。これが大変好評で、当初用意していた約2000部がたった1日で売り切れ、追加で3000部作ったそう。テレビでも紹介され、地元の方を始め、多くの人々に喜ばれました。

「初めての試みで大変なことも多かったのですが、角島大橋で村岡山口県知事にもお渡しすることができたり、今までになかった試みに地元の方々に喜んでいただけたり、周りの皆さんの評価を受けて、乗り越えることができました」。

県知事には山口県庁で贈呈式、下関市長には角島大橋の見えるホテル西長門リゾートで贈呈式をしました。

また、2年前、新型コロナウイルス感染拡大により成人式ができなかった方たちのために準備した「成人式プロジェクトin HOUHOKU」も喜ばれました。

他にも、駅にキッチンカーを呼んでマルシェを開いたところ、予想以上に人が集まり盛り上がったそうです。この後、郵便局にもお菓子や野菜を置いて販売するようになり、多くの方が買いに来てくれるようになりました。

最近では、初めてジャズライブを開催。福岡などでは、よくコンサートなどの音楽イベントが開催されていますが、豊北町のような田舎では生の音楽を楽しむ機会がほとんどありません。

「買い物するのにも、1時間に1本あるかないかの電車で行かなければなりません。そんな地域に住む人々に、生の音楽を楽しんでもらえたらと思って企画しました。これからも色々なイベントを企画していきたいです」。

地域の人々が気軽に相談できる窓口に

これまで携わった様々なプロジェクトは、郵便局を訪れた方たちと話をして、聞くことができた地域のみなさんの声をもとに企画してきました。活動を通じて、いろいろな人とのつながりができ、次第に人々が妻崎さんに悩みを相談してくれるようになったそうです。

「FacebookやInstagramといったSNSを使って情報発信していると、全く知らない人や若い人たちからも相談を受ける機会が増えました。田舎では誰かに相談できる窓口がないことも多いですが、わたしが相談できる場となることができました」。 きっと妻崎さんの柔らかい人柄と笑顔が、本音を話しやすい空気を作っているのではないでしょうか。

移住者からもらうパワーが原動力

2020年、JR阿川駅のそばに、ガラス張りのおしゃれなカフェ「Agawa」がオープン。地元の特産品で作られたドリンクやフードを提供しています。ここを運営しているのは、当時萩市を拠点に活動されていた方で、地域のために頑張っている人を全力で応援する妻崎さんの人柄や面白がって関わろうとしている姿に惹かれ、そんな人がいる地域は良い場所だと確信し、阿川への出店を決めたそうです。阿川駅には、観光列車「○○のはなし」が15分程度停車します。その際に、「Agawa」では、この観光列車の乗客だけが購入できるお土産が販売され、妻崎さんは接客をサポートします。

このほかにも、和歌山から移住して来た方が始めた干物屋さん「魚健」とコラボし、一緒に山口県内の郵便局を回って宣伝活動を行うなど、移住者の様々な活動をサポートしています。県外から移住されて来た方たちの多くが、お店を経営しています。長年、郵便局で働き続けて来た妻崎さんにとって、商売をすることは、自身がこれまでに経験してきたこととは違う大変さがあると感じ、心打たれて応援したいと思うようになったそうです。妻崎さんの行動力は、頑張っている移住者のパワーから来るのだと言います。

「移住されて来た方々は、外からの目で山口の魅力を教えてくれるので、中で暮らしていては気付けなかった魅力、忘れていた魅力を再確認することができます。山口には、海だけじゃなくて、山や川、歴史ある街などたくさん魅力があるけれど、まだまだ発信しきれていない部分があると感じました」。

地元の人も移住者も幸せになれるまちづくり

妻崎さんが新しいことを企画するときに大切にしているのは、元からこの地域で暮らす、地元の人々も楽しめる場所でなければいけないということ。地元の人々の応援がないことには、新しいことは楽しめません。

たとえば、新しいカフェができても、コーヒー1杯500円という価格は、田舎で暮らす人々にとっては高いと感じられることも。それだけでカフェの敷居が高くなってしまい、足が遠のいてしまいます。そこで、ただコーヒーを飲むだけの場所ではなく、地元食材を使っていることを伝えるなど、地域の人とコミュニケーションを取りながら、楽しんでもらえる工夫をしているそうです。 妻崎さんは、移住者と地元の人との間を取り持つ役割を担い、ここで暮らす全ての人にとって心地よいまちづくりを続けていきます。