離れていても地域とつながる記憶になる、【遊び】の場にこめたメッセージ |いわくにまるごとasoviva!(岩国市)

 地元・岩国市のまるごと全てをフィールドに、【遊び】という場を通して、岩国と人、そして未来へつながる場所づくりを目指す <いわくにまるごとasoviva!(以下 、asoviva!)>。

 これまで、市内の廃校で映画祭を開催するなど新たなイベントを企画する一方伝統的な盆踊りや阿品たくあんづくりのお手伝いといった地域に溶け込む活動も続けています。

 主宰するのは、岩国市出身の西村郁江さん。東京で暮らしながら地元への想いをどのよう に形にしてきたのか、また、離れて暮らすからこそ見えることやできることをたっぷりうかがいました。

課題意識のバックグラウンドにあるもの

 西村さんは、岩国市の中山間部にある南河内地域のご出身。幼い頃の同級生は 27人の1クラス。「幼稚園から中学校までほぼ同じメンバーで、運動会は地域あげての総力戦」だったそうで、地域の温もりがうかがえます。

 岩国高校を卒業し、進学で上京。大学では国際紛争や社会問題について学び、格差や価値観の違いを受け入れ、多様性ある社会のために何ができるかを考えるようになったとか その後は、広告代理店に勤務 クライアント開拓から企画、ディレクション、実施までオールラウンドで活躍した経験が、主宰する<asoviva!>でも発揮されています。

いわくにまるごとasoviva!とは

 <asoviva!>が生まれたのは、2016年1月のこと。それまで、東京在住で岩国高校出身の友人2人と会うたび、「地元で何かやりたいね」と話していた西村さん。想いは他の同級生へも伝わり、偶然にも住居が5km圏内(当時)だった4人から年明け早々、「やろうや!」とメールが届いたそう こうなれば、「会おうや!」と数日で行動開始。メンバーは 西村さんのほかに、服飾デザイナーやサイン看板デザイナー、Webデザイナー、パン職人 と、クリエイティブな面々。「面白いことができそう!」という期待と、地元 岩国に対 する共通の思い出を結びつけ、ユニット名は<いわくにまるごとasoviva!>と命名。月に1回集まることでモチベーションを維持できたそうです。

「離れていても、地域とつながれるよ」

 「まずは、やってみよう!」と、できること&やりたいことをまとめた結果、2017年3月 にドライブインでの映画上映会が決定。「映画は、異なる文化や考え方が広がっていて、私自身も大好きなもの。今は岩国に映画館がなくなり、芸術に触れられる機会が減っています 。映画を通して頭と心を柔らかく、新しい価値観や人の流れを生み出せたら」と西村さん。

 初めての上映会は 70人を動員。2018年には、廃校となった母校を会場に2回目へ発展し 、2020年3月には3回目が予定されていました(新型コロナの影響により延期)。

 「1回目でのアンケートに『またやって欲しい』『南河内には初めて来た』という声があり、イベントによって賑わいが生まれる実感がありました。また、廃校になった場所にもう一度子どもたちのにぎやかな声を集めたい。かつての学び場が子どもたちの集う遊び場になればという想いがあったので、母校を会場にすることも大事でした。

 私たちメンバーが故郷の【遊び】という子どもの時の思い出でつながっているように、今、岩国で育つ子どもたちにも故郷の豊かな体験や記憶を伝えることで『離れていても、地域とつながることができるよ』と伝えたかったんです。

地元とつなぐキーマンの重要性

 とは言っても、東京在住で、遠く離れた地元とやり取りするのには難しい面もあったとか 。 「南河内に住む2つ上の先輩が、キーマンでした。私たちが帰って急に何かやりたいと言っても、地元のおじちゃんたちは応援してくれつつも新しいことへの不安も口にされていました。その状況の中でこの先輩が動いてくださったことで地域も大きく動き出しました。先輩は社会福祉協議会に属し、地元有志グループのリーダーでもあるんです 」。

 西村さんは地元と向き合いきちんと関係を築くため、ほかにも盆踊りと阿品たくあんづくりは帰省のたびにお手伝い。ある年の盆踊りでは地域と海外の方(アメリカ・台湾)との交流も予定されていたため 、<asoviva!>企画によるうちわ作りワークショップと台湾映画上映会も併催し、グローカルな雰囲気に包まれたそうです。

 また、立ち上げ当初から岩国市職員に相談し、円滑な活動と地元での認知拡大が叶えられ ているとか。地域おこし協力隊としてUターンした高校の後輩を含め、地元で活躍する2人も加入し、現在、メンバーは7人となりました。

コロナ禍での動きと、これからについて

 3月のイベント延期を決め、何ができるか模索した<asoviva!>メンバー。今回は初の試 みとして、まだ広く知られていない地元の魅力的な店を、地元メンバーがイベントブース で紹介予定でした。リアルな場で紹介できなくても、できる形で発信したいと、6月には SNSでそれらの店の紹介記事を投稿。

 一方、西村さんら県外メンバーは、都市部に暮らすからこそ見えるもの、感じることがあったと言います。「30年後に今と同じ形を維持しているか分からないほど地元の過疎化は進んでいます。またコロナ禍のこのような事態に東京で暮らしていると、都心は疫病や災害にとても弱い場所だと痛感します」。そんな中、東京でできることとは? 「一つは、外に出た者だからこそ気付く地元の暮らしの豊かさや魅力をストーリー化し、発信機能を果たすツールとして編集し地域と都心の【つながり】の橋渡しをすること。もう一つは、『山口県』というスケールサイズで何かしたいと思っています。岩国も下関も萩も、どこも素敵なまち。地域の垣根を越えて手を取り合い、愉しく面白く、まち・人・モノ・コトをつなげて『オール山口』な動きも生み出せたら良いですね」。

ユニット名いわくにまるごとasoviva!
公式サイトhttps://iwakuni-asoviva.com/
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