地元への諦めの言葉から見つけた新たな兆し
「一歩踏み出したら、その先にどんどん世界が広がっていったんです」。そう話すのは、山口県出身、東京都在住の奥山成美さん。子どもの頃から下関市、柳井市、周南市、山口市と山口県内各地を転々と暮らしていたため、県全体に満遍なく愛があると言います。
東京に出てからは山口県は帰る場所として感じていましたが、県出身の知人に会った際には地元への諦めの言葉を聞くことがあり、残念に思うことも多かったのだそうです。ですが、そこにチャンスの光を見出した奥山さん。地方に起業家マインドが育てば、地域ならではの伸びしろがあるのではないか。自分は東京に暮らしながら、山口県でスタートアップがたくさん生まれるような動きや土壌を作ろう。そんな想いに駆られ、思いつく限りの行動を片っ端から行っていったのでした。
勇気を持って踏み込むことで、世界が広がるという体験
実は奥山さん、2015年にビジネス・ブレークスルー大学(※1)に入学しています。会計士として働きながらオンラインで講義を受け、2019年4月からは卒業論文として「地方への関わり方の多様化に関する研究」をテーマに活動。行動量は格段に上がっていき、半年に一度程度だった山口県への帰省は1〜2ヵ月半に1度というペースに。ときには実家に帰らず、県内各地に足を運ぶこともありました。
そこで転機となったのが、2泊3日でスタートアップを体験する“Startup Weekend(※2)”というイベント。奥山さんは2019年10月、下関市で開催されたこちらのイベントに、参加者として出席しました。とても良い取り組みだと感じた奥山さんは、その場で主催者に「県内各地でこのイベントを開催したい」と直談判。運良く周南市で同様のイベントが開催されることを教えてもらい、サポート役として活動に加わることができたのでした。
山口県との関わり方を模索する日々
そのようにして東京から山口県内各地に足を伸ばし、一歩踏み込んでは新たな縁を築いてきた奥山さん。幼少期から行動派な一面はあったと言います。ただ、経験が積み重なることで凝り固まってしまったり、自分自身のことが見えにくくなることも多かったと感じているのだそう。
最近は山口県との関わりを深める中で自分はどう在りたいか、どのように世の中の役に立てることをするか、自分自身に向き合うということも増えてきました。
「つながりを深めていく中で、動けば世界は広がるんだという実感を得られました。まだまだ模索の最中ですが、私は仕事柄、スタートアップ企業のバックオフィス業務全般をサポートすることができるので、まずは起業したい人や何か新たに始めたいという人のために、知識的な面でのお手伝いができたらいいのかなと。山口県からスタートアップ企業や新しいことへ挑戦する人が増えるよう、東京と山口を行き来しながら活動したいと考えています」。
これからの在り方、山口県を照らす希望の光
2020年2月以降、新型コロナウイルスの蔓延により世の中は目まぐるしく変わりました。その中で、山口県に対する期待も高まっていると話します。
「世の中に一気にオンラインが浸透していったことで、山口県ともより関わりやすくなってきていると感じています。物理的な距離というものが、心理的に縮まってきています。今は、東京にいながらも山口県と関わるということにワクワクしているんです」。
働き方や暮らし方が多様化する現代、地域とのつながり方も従来の方法に限られたものではありません。独自に山口県でのつながりを広げ、深めていく奥山さんの存在は、山口県を照らす光のように感じられました。
(※1)ビジネス・ブレークスルー大学…通学不要・100%オンラインで経営学の学士を取得できる東京都千代田区に本部を置く日本初の大学。「経営」「IT」「問題解決能力」「リーダーシップ」「英語」をカリキュラムの柱として、世界を舞台に新しい事業を創出し、結果を出せる人材の育成を目的とする。
(※2)Startup Weekend…世界150カ国以上で開催され36万人以上が参加しているスタートアップ体験イベント。金曜日の夜から日曜日までの54時間で仲間づくりをしながらプロトタイプを作り、仮説検証を回し続ける。