地元から離れて気づいた、山口にある“目に見えない心の豊かさ”

地元山口を離れ、IT企業で活躍

長門市出身で、現在は東京都にお住まいの中原晃治さん。高校卒業まで長門市で育ち、大学進学とともに東京へ移り住みました。東京を中心に、千葉や神奈川、関西へ転勤されることもありながら、38年間NEC Corporationに勤務。昨年、定年退職されてからは、東京でソーシャルイノベーターとして社会の課題解決に努めています。

母の介護を機に、地元である山口と再び繋がる

約2年前、山口で暮らす母が大きな病気で入退院を繰り返すようになりました。東京にいては、なかなか病院や介護施設の情報が得られないため、下関市に住む兄と、山口市に住む妹と話し合い、中原さんは、山口でテレワークをすることを決意します。会社の遠隔居住地勤務制度を利用し、月2回東京に出社するほかは、山口で仕事をすることになりました。テレワーク中は、山口県庁内にあるテレワークオフィス「YY! SQUARE」や山口市内の商店街にあるコワーキングスペースなどを活用したそうです。

中原さんは、地方創生としてサテライトオフィスを作ったり、企業を誘致する業務に携わってきました。これまで全国、海外と幅広い地域と関わり、自治体ともコラボレーションしてきましたが、地元である山口とは仕事での繋がりはなかったそうです。長い間、山口を離れて過ごしていましたが、テレワークをきっかけに、定年退職間際に山口との濃い繋がりが生まれました。

コミュニティへ飛び込み、趣味から地域へ繋がる

もともと、趣味やボランティアを通して、地域の人たちと共に社会参加することが好きだという中原さん。スポーツでは、山口のラグビーの同窓会に所属しています。音楽では、クラシックやジャズバンド、父の影響で俳句や作詞という趣味も持ち、幅広く楽しんでいるそうです。また、趣味から地域に馴染むためボランティア団体に入ったり、出張先の全く知らない土地でも一人でバーに飛び込んだりと、人との新たな出会いを大切にしてきました。どの地域を訪れても、すぐにサクッと仲間に入ることができたと言います。山口でも、スポーツや音楽、文芸から広まったコミュニティで、小さい子どもから高齢者まで新しい人脈を増やしていきました。

音楽祭の企画運営を通して長門市を盛り上げる

持ち前の明るさとコミュニケーションスキルを活かして、様々なコミュニティで活躍して来た中原さん。中でも、特に印象深いのは、長門市で開催された、大津あきらの音楽祭の企画運営に携わったこと。一般社団法人「大津あきら顕彰会」が主催し、昭和を代表する作詞家である大津あきらの故郷、長門市仙崎を盛り上げる音楽イベントであり、山口つながる案内所が支援するプロジェクトです。立派な劇場で音楽祭を開催することができ、濃い時間を過ごすことができたと言います。今後もまた、音楽を通して地域を盛り上げる活動に挑戦したいと考えているそうです。

離れて過ごして気づいた、山口の価値

海の幸や山の幸、温泉など、様々な魅力を持つ山口県。中原さんが少年時代を過ごした長門市には、青い海や緑、太陽の町という印象があり、これ以上良いところはないと、感じていたそうです。もちろん、そうした目に見えて感じられる魅力も多い地域ですが、大人になって転勤を繰り返す中で、いろんな地域を見て改めて、山口には“目に見えない人の心の豊かさ”があると感じたと、中原さんは語ります。

「音楽にしてもスポーツにしても、俳句や文芸にしても、心の豊かさを感じるんですよね。有形無形問わず、地域の財産が宝物のようにあふれている山口には、文化や芸術を含めた人の部分にポエムがあると思っています」。

移住先は、“心の幸”を見つけられる地域へ

山口を中心に、広島や福岡など周辺の地域も、中原さんにとっての“心の港”なのだとか。隣県を訪れるのも楽しみの一つです。先日、博多港を訪れた際の写真を見せてくださいました。

「人生100年時代、健康で幸福な生活ができる前提の移住定住をするのが良いと思っています。仕事のためだけ、趣味のためだけに移住するよりも、生きがいや健康づくりなど、自分の腑に落ちるような生き方ができたら良いのではないでしょうか。それがたとえ自分のふるさとではなくても、自分の生きがいになるものが見つかればそれだけで成功だと思います。長年、ITを通じて移住支援を提供してきた経験から、物質的なものよりも“心の幸”みたいなところを大切にしたいです」。

現在、中原さんは、独立開業の支援を受けながら、ソーシャルイノベーターとしてスタートアップ事業を立ち上げるための準備中で、2023年3月に立ち上げを予定しています。仕事の都合もあり、東京にあと2年は住み続けることが決まっているそうですが、その先は移住を検討しており、移住先の候補地の一つが長門市です。その時に地域との繋がりがあれば、山口に事務所を作りたいと考えているそうです。今は、空き家バンクに登録し、長門市を中心に物件を探しています。

東京にいながら今も山口と関わりを持ち続けている中原さん。今後もきっと、人々を巻き込んで山口を盛り上げてくれるのではないでしょうか。