地域おこし協力隊の任期満了後、お弁当の販売やキッチンカー事業を開始。関係人口創出や宇部市の魅力発信に取り組んでいます!

旅行で訪れた角島に魅了され、山口に通うようになりました!

兵庫県神戸市出身の八代谷寿子さんが、山口県に興味を持ったのは、20代前半の旅行だったといいます。きっかけは実姉からの「山口県の角島というところがとてもキレイだったよ!」と聞いたことでした。といっても、そのときはすぐに行くワケでもなく、訪れたのは数年後。初めて角島を訪れたときに、その美しさにすっかり魅了され、気がつけば年に3〜4回は山口県を訪れるようになっていたといいます。

神戸から角島までは片道5、6時間かかるため、少しずつ距離を感じはじめていたときに「だったら、住めばいいじゃん!」って考えるようになったとか。角島に遊びに来たときに住まいを探したり、インターネットで仕事を検索してみたり。なかなかいい物件や仕事に出会えずにいたときに、偶然テレビで地域おこし協力隊の存在を知ります。

探してみると山口県内で地域おこし協力隊の募集がいくつかあり、条件や場所などを検討した結果、宇部市の地域おこし協力隊に応募し、見事採用されたのです。こうして八代谷さんは、念願だった山口県で暮らし始めたのです。

兵庫・神戸の郷土料理「粕汁」を山口でも広めたい!

「私は宇部市の地域おこし協力隊の1期生でした。2016年9月から活動をスタートさせましたが、スタートした頃は何をしていいのかわからないままに活動していたものです。吉部地区のおばあちゃんたちが作る特産品の販路拡大などに取り組み、何をしていいかわからないながらも、イベントのお手伝いなどをしているうちに、宇部市に『貴』という日本酒をつくっている永山本家酒造場という酒蔵があることを知ったのです」。

八代谷さんが生まれ育った神戸には酒粕を使った“粕汁”を家庭で食べる文化がありました。けれど、この地域には粕汁の文化がなく、こんなにもいい酒粕があるにもかかわらずもったいない!と、イベントで粕汁を販売する活動をスタートさせたのです。そのような活動をしていくなかで、今度は吉部地区のお米の美味しさに衝撃を受け、今度はおにぎりの販売をしようと考えたといいます。

けれど、そこには食品衛生上の壁が立ちはだかります。「素手で握るおにぎりは食中毒のリスクが高く、その場で握るということができないものでした。いろいろ調べていくうちに、キッチンカーだったらおにぎりを提供できることがわかりました。さっそく宇部市役所に相談したところ、市職員の方々や宇部商工会議所の方々が創業補助金の申請手続きをはじめ、手厚くサポートしてくださいました。そして、3年間の協力隊の任期を満了するタイミングで『Kitchen846(やしろ)』を起業しました。」

地域おこし協力隊の任期満了後、キッチンカー事業を始動!

八代谷さんは、協力隊退任後に地元・神戸に戻る選択はなかったといいます。

「このエリアは年配の方が多くて、昔ながらの温かさや、人付き合いが残っていることに魅力を感じていました。皆さんかわいがってくれて、野菜やお漬物、お菓子をおすそ分けしてくれたりします。実はこちらに来て15kgも太ってしまったんですよ(笑)。

起業するにあたっては、仕込みのための調理場を借り、平日はお弁当の販売も行っています。お弁当は前日までの注文で、市役所などに配達しています。また、2022年の夏には、毎週土曜日に、小学校の旧校舎にある『職員室カフェ』を借りて天然氷のかき氷店をスタート。今年も6月から9月まで、営業する予定です」。

八代谷さんが使うお米は、吉部地区の契約農家から仕入れたもの。「その農家さんのお米が本当に美味しくて感動モノなんです。吉部エリアの中でも標高が高いところにあり、水もキレイなんですよね。国内最大規模のお米の品評会『米・食味分析鑑定コンクール:国際大会』で、入賞したこともあるんです」。

そのお米の美味しさをダイレクトに感じられるのが、塩おにぎり。シンプルに海苔で巻くだけで、甘くて旨みのあるお米の味わいが口の中に広がるそうです。

移住者の先輩として、移住者や移住希望者をサポートしたい!

『Kitchen846』の活動を行う一方で、関係人口の創出や、移住者支援を行ったり、SNS等で宇部の魅力を発信したりと幅広く活動する八代谷さん。宇部市に移住した人たちが交流する「うべ暮らし交流会」の企画・運営にも関わっているそうです。「移住者って孤立しがちなんですよね。なので、手芸をしたり、パンとスープを味わったり、宇部の情報交換をしたり。以前は毎月開催していましたが、現在は2、3ヶ月に一度のペースでのんびりと開催しています」。

また、地方とのつながりに関心がある県外在住者を対象に、宇部の魅力に触れるきっかけとなる「関係人口創出事業」も積極的に開催しています。「農業体験や田舎暮らしなど、都会ではできないことを体験しつつ、のんびり過ごしてもらえると嬉しいですね。ゆくゆくは、このエリアのお年寄りの皆さんと交流してほしいと考えています」。

そんな八代谷さんは、近々、マッサージ事業もスタートさせる予定とか。「神戸で通っていたゴッドハンドの方がいて、その方から指導を受けています。田舎は1つの事業でドーンと稼げませんが、複数の事業を行うことで生活できるくらいのお金を稼ぐことが可能です。神戸で暮らしていたときは、起業なんて考えたこともなかったけれど、人生何があるかわかりませんね」と、笑顔で話してくれました。

最後に。この記事を読まれている方へのメッセージをお願いしました。

「まずは一度、宇部に来てほしいですね。疲れている方は、特に来てほしいです。ここはとても癒やされる土地ですから。また、都会ではできないこともたくさん体験できます。この土地の良さを一人でも多くの人たちに知ってほしいと思っています」。

旅行をきっかけに山口県に興味を持ち、地域おこし協力隊として移住。任期満了後も定住し、さまざまなことにチャレンジし続けている八代谷さん。その笑顔からは、地域の人々に囲まれて、充実した日々を過ごしていることが窺えました。

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