〔レポート〕大津あきらが残した音楽を、青春を送る全ての人へ届けたい(長門市仙崎地区)

長門市仙崎出身の偉大なる作詞家を称えて

穏やかな日本海に面した長門市、その中央部にあるのが仙崎地区です。
ここはかつて古式捕鯨等の漁業も行われていた港町で、昔から多くの人たちが行き来する場所として賑わいを見せていました。

そんな自然豊かな仙崎で生まれ育ったのが、作詞家・大津あきら。
大津あきらは数多くの著名人への歌詞提供を行い、幅広い分野で活躍する昭和歌謡を代表する作詞家でしたが、1997年、がんにより若くしてその人生に幕を閉じました。

こうした、大津あきらのこれまでの功績を称え、次の世代へと伝えるべく、地元仙崎の同級生メンバーを中心に設立されたのが「大津あきら顕彰会」。

顕彰会では、歌碑の建立やイベントの開催等を行っており、今回のプロジェクト「大津あきら青春♪音楽祭」も、その活動の一環として行われました。

これまでも、道の駅センザキッチンでのチャリティーライブや、市内中学生との大合奏、歌謡フェスの計3回の音楽祭を開催し、地域全体を巻き込みながら延べ1,300人を集客し、大津あきらが手がけた作品を多くの人のもとへ届けてきました。

そして、2022年12月10日~11日の2日間で行ったプロジェクトでは、関係人口として参加された方々に、大津あきらの故郷・仙崎を追体験していただき、大津あきらの再従兄弟にあたるバリトン歌手・大津康平氏を招いて開催された第4回音楽祭のステージに登壇していただきました。

大津あきらの生きた足跡を辿る1日

プロジェクトの1日目は、大津あきらが愛した故郷・仙崎めぐりからスタートしました。彼の同級生を案内人として交え、仙崎の魅力をあらためて学びながら大津あきらの詩の原点を辿りました。

今回訪れたのは
「道の駅 センザキッチン」
「仙崎港の碑」
「王子山公園」
「日比ナツミカンの樹齢260年の原木」
「金子みすゞ記念館」
「大津あきら4つの歌碑」
「大津あきら『青春♪音楽館』予定屋敷」の7カ所。

仙崎のこれまでの歴史を紐解きながら、代表的なスポットへと足を運びました。
仙崎出身の童謡詩人・金子みすゞに関連する場所も多く点在し、中でも、王子山公園には彼女が詩の中で描いた展望台があり、そこには仙崎地区全体を見渡せる雄大な景色が広がります。

歌碑の建立は、大津あきら顕彰会の最初の目標であり、彼の同級生である有志の力によって仙崎のあちこちに建てられています。

歌碑として建てられたのは、彼の代表作である
「少年(漁場抒情)」
「心の色」
「輝きながら…」
「for you…」の4作品。
一番最初に建てられた「少年(漁場抒情)」は、彼が仙崎の町を想って書いた詩だといわれています。

そして、顕彰会が現在目標として掲げている、音楽館の予定屋敷へと足を運びました。
彼がこだわる「“青春”を大切に持ってもらいたい」、そんな願いを未来へと残すため建設が企画された音楽館です。
長い間、空き家として人の手が入っていなかった古民家ですが、顕彰会のメンバーによって少しずつ準備が進められています。

大津あきらの足あとを辿った後は、音楽祭のリハーサルへ。
盛りだくさんの内容で1日目が終了しました。

音楽祭本番を迎え、新たに見えた景色

2日目は音楽祭本番当日。会場の「ルネッサながと」で朝からリハーサルが始まりました。
プロジェクト参加者もリハーサルに立ち会い、プロの現場を間近で体験しました。

そして緊張の中、本番を迎えました。

音楽祭は1部と2部に分かれ、地元合唱団をはじめシンガーソングライターや歌手が出演。
それぞれ大津あきら作詞の曲を中心に、金子みすゞの曲も歌われました。

その中で第2部の終盤では、大津あきら未発表の詩を大津康平氏が作曲して完成させた「母が教えてくれた詩」を本邦初披露。大津康平氏の歌声にのせた曲は、観客の心を揺さぶるものとなりました。

大成功で幕を閉じた公演の終了後、すぐに次の音楽祭へ向けた検討会をプロジェクト参加者と顕彰会メンバーで行いました。

話し合いの中では、かつて大津あきらとともに活動していた坂本龍一、矢沢永吉、高橋真梨子、根岸季枝など、歌手や演出家、作曲家といった幅広い分野のプロとのコラボレーションの実現や、また参加者の一人には日本フィルハーモニー交響楽団員もいたことから、楽団と小中学生吹奏楽団の共演など、多くのアイデアが挙がりました。

さらに、IT業界に勤めるプロジェクト参加者の一人からは、バーチャル空間に構想中の音楽館を作り、ユーザーがアバターを使って自由に見てまわれる「大津あきらバーチャル青春♪音楽館」の構築、長門市から東京などの遠方の合奏団と繋がるオンライン合奏と、今までにない取り組みも見えてきました。

プロジェクトを通して新たな展開へ

12月で第4回を迎えた大津あきら青春♪音楽祭。彼の幼馴染であり、その運営に携わるルネッサながと 館長・大井さんは、プロジェクトを通してこう話します。

「これまでの参加者からは小さな元漁村ということ以外、初めはほとんど何のイメージもなかったと言われます。ですが、『戦後最初の引き揚げ港』『近代捕鯨の発祥地』『道の駅 センザキッチン』『金子みすゞの生まれ故郷』『大津あきらの生誕地と4つの歌碑』などを訪ねて回る中で、人口1万にも満たない街にお寺が11寺もあったり、大正昭和の時代に大いに栄えた町ということで、昭和レトロの新鮮さが現在脚光を浴びていることから、非常に注目できる存在であることが分かったようです。」

また、参加者のほとんどが長年音楽に携わってきた人たちです。『大津あきら青春♪音楽祭』を核として、J-POPの力で地域から大津あきらを全国に広げられる仕掛けができることが分かりました。
県の事業があったからこそ東京在住の方々を巻き込めるような、今後の新しい展開・可能性を見出せたので、実現へと繋げていきたいです。」

2023年には、第5回以降の音楽祭の企画も着々と進行しているとのことで、本プロジェクトを通して新たな可能性が見えてきた大津あきら顕彰会。

仙崎が誇る作詞家として時代を超えて記憶に残り続けるように、大津あきらが残した曲を誰もが口ずさむような未来へと繋げるために。

大津あきらの曲は「若者が青春の苦しみを駆け抜けるための応援歌」とも話す大井さん。
音楽館設立に向けて、大津あきら顕彰会メンバーによるひたむきな活動が今日も続きます。