〔レポート〕大津島暮らし体感ツアー2022(周南市大津島地区)

現在197人が暮らし、高齢化率が79.6%の大津島。高齢化、過疎化が進むこの島では、12年前に地域おこし協力隊として移住してきた大友翔太さんを中心に、関係人口を創出する取り組みが継続的に行われており、2019年からは毎年、拓殖大学の学生たちが島を訪れています。

離島という立地条件や高齢化率の高さから、大津島が理想として掲げる関係人口の在り方は、継続的に島を訪れて、島の地域づくりやイベントづくりの担い手となり、島民にも存在を認識されるような関係性の深いものです。そのために大友さんたちは、学生たちが無理なく継続して島を訪れることができるシステムづくりに尽力されています。

島の特産品・すだいだいを学生とともに育てているのもその一環で、すだいだいを使った商品を開発し、その商品を販売して得られる収益を学生たちの島への渡航費に当てるというサイクルの構築を目指しています。また、販路として、学生がコンセプトや名前、ロゴを考案し、東京で不定期に営業する島のアンテナショップ『かんじいろ』があります。

今回は、大津島を知ってもらい、さらに興味を持ってもらおうと、学生たちが島の当たり前の暮らしを楽しみながら体験することを目的にプロジェクトが行われました。

第1弾は、9月8日〜9月11日の3泊4日で行われ、学生15人、社会人3人、受け入れ側として島民4人が参加しました。

第2弾は、12月9日〜11日の2泊3日で、学生12人、社会人2人、受け入れ側として島民8人が参加しました。飛び入りで参加した人も含めれば約50人が交流しました。

第1弾では、2019年から継続して行われているすだいだいの栽培に関連した作業や島内各集落の側溝掃除のほか、初日には、学生たちの希望で竹林整備を兼ねたそうめん流しも行われました。20分ほど山を登ったところの竹林から自分たちで竹を切り出し、島民の方から教わりながら竹を2つに割って節を取るなど、初めての作業に没頭。作業後の遅い昼食となりましたが、心地よい疲労感の中、笑顔で昼食を楽しみました。

2日目には島に残る歴史資料や郷土資料の記録・保存に向けた作業も行われました。これは高齢化が進む中、口伝や紙、写真だけで残存している記録の消失を防ぐ取り組みで、今回は島の小学校に残る資料の確認が行われました。歴代の卒業写真には、参加された島民の方のご親族やお知り合いが写っていることも多く、昔を懐かしむ島民の方と学生の間で話の花が咲きました。

最終日には、すだいだいを使った特産品開発のワークショップも行われ、チーム分けされた学生たちがアイデア出しから試作品作りまで、自分たちの力で行いました。

そして、すだいだいの果汁を使った『すだいだいチキン』と『すだいだいサルサ』が誕生。島のアンテナショップ『かんじいろ』のキッチンカーで実際に商品として販売されました。

第2弾では、すだいだいの収穫体験や恒例の奉仕作業のほか、釣り大会も開催されました。学生たちには、大友さんから「釣った魚が夕食の食材となるため、釣れなかった場合は市販の鮭フレークです(冗談)」と事前に言われていたため、学生は頑張って魚を釣り上げていました。釣り体験自体が初めての学生も多く、大きな魚に目を輝かせていました。

釣り大会の後は、学生が3チームに分かれて、釣った魚や島の食材を使ったオリジナル鍋づくり大会を開催。魚のミンチを団子にして入れた鍋が多くの島民の支持を得ました。

今回、初めて島を訪れた1年生もいましたが、木登りや柿の収穫なども積極的に体験。今回のプロジェクトを通して、学生たちは島の労働力として貢献しつつ、すだいだい収穫や釣り体験、島の猫たちとのふれあいなど、大津島の日常を、自分たちが普段感じることができない非日常として体験しました

プロジェクトの中心を担われた大友さんは「大変な作業も多い島の日常を体験してもらったのですが、学生たちの意欲も高く、しっかり狙い通り楽しんでくれていました。」と手ごたえを感じられています。

一方で、「昨年に引き続き、コロナ禍での開催は、感染への配慮から急な予定の変更や、本来最も交流してほしい島のお年寄り層への接触も制限されるなど課題も多いです。今後はもっと交流を持てるように考えていきたいですね。また、年ごとに違う学生たちが訪れるので、今後も学生たちの集中力と意欲が続くようにするのが一番の課題です」と今後の取り組みへの意欲をにじませます。

2019年に始まった取り組みは、今回特産品を使った商品開発まで進み、学生たちがアンテナショップで販売できるまでに成長しています。卒業したOBたちがイベント時に遊びに来たり、アンテナショップの営業を手伝ってくれることも!

「縁もゆかりもない土地だけど、第二の故郷のように思ってくれるのが理想です。いずれは卒業後に周南市などに就職して、週末は大津島へ…なんて学生も出てくれると良いなと思います」と大友さん。

学生たちの中で代々引き継がれる島への関わりが、大津島の将来を明るく照らしてくれるはずです。