〔レポート〕【冬のキャンプ場を救え】1泊2日で地域の魅力を知って体験!楽しいウィンターキャンプを一緒に考えてくれる人募集(萩市須佐地域)

萩市須佐にある「須佐湾エコロジーキャンプ場」は、美しい海が眼下に広がる風光明媚なキャンプ場です。そんな場所にも実は悩みがあり、それは「冬季の利用者が少なくなる」こと。ここは冬になると海風が厳しく、周辺地域には積雪が多くアクセスが難しくなることから、夏と比べて利用者が減ってしまうことが課題になっています。

それを解決するきっかけにしたいと企画されたのが、今回の1泊2日のプロジェクト。主催した須佐湾エコロジーキャンプ場の尾田一樹さんは、地域おこし協力隊として福岡県久留米市から移住し、2020 年10 月からキャンプ場のスタッフとして働いています。

今回のプロジェクトでは、キャンプ場内でのさまざまな体験や須佐周辺の地域をめぐり、参加者の皆さんにキャンプ場と地域の魅力を知って頂いた上で、キャンプ場の閑散期における活用法について、新しいアイデアを考えてもらいました。

参加した皆さんの年代は20 〜70 歳代と幅広く、アウトドアへの関心度も初心者からベテランまでさまざま。遠くは埼玉県から集まり、萩市内でALT として働くカナダやアメリカ出身の方も参加し、国際色豊かな顔ぶれになりました。

まずはキャンプ場を知ってもらうため、近くの須佐湾に下りて海浜清掃。北長門海岸国定公園の一部でもある須佐湾は美しい海が広がっていますが、海岸にはペットボトルをはじめ、海外からの漂着ゴミも多数。参加者の皆さんは意外なゴミの多さに驚きながらも、力を合わせて海岸を綺麗にしました。

その後は「須佐唐津焼」の制作体験。400 年以上の歴史をもつ須佐唐津焼は、国産としては最も早い江戸初期に青磁器を作ったといわれ、江戸時代に毛利藩主・益田領主の保護を受け、御用窯として発展。明治時代になり御用窯としての役目を終えましたが、今も陶工の土谷家によって伝統の技が受け継がれています。

この日はキャンプ場に2 人の講師をお招きし、ろくろを使った制作体験に挑戦。マグカップや茶碗などから作りたいものを選び、慣れない作業に奮闘しました。歴史や特徴などのお話とあわせて陶土に触れることで、その魅力を深く体感することができました。

そしてお待ちかねの夕食は、キャンプの醍醐味・バーベキューを開催。スタッフさんが前日から仕込み、1時間半かけて炭火でじっくり焼いたスペアリブをはじめ、ステーキや地元産の野菜など、アウトドアならではのご馳走が大好評でした。

焚き火を囲んで自己紹介をしながら交流し、カナダ出身の方による本場のスモア(焼いたマシュマロとチョコレートをクラッカーで挟んだデザート)や、皆さんのキャンプ体験談も楽しみ、日帰り参加の方も” 泊まりたい” というほどの盛り上がりに。宿泊参加の方はケビンに宿泊し、秋のキャンプを満喫しました。

翌日はキャンプ場の外に出て、周辺地域の魅力を発見するツアーへ出発。最初の行き先は須佐にある「炭焼き窯」で、ここで地元の木を使って作られる炭はキャンプ場でも使われています。当日案内人となったのは、炭焼きの名手であり、茅葺き屋根の職人でもある猟師さん。

元祖マルチワーカーの案内人のもと、皆さんが体験したのは窯から炭を出す作業。耐火レンガと土でふさがれた窯の出入口を壊し、中から次々と炭を運び出します。窯に火を入れたのは約2週間前だったにもかかわらず、窯の中はまだほんのりと温かく、作業をしていると汗をかくほど。気さくな案内人さんのお話も含めて、地元の方でもなかなかめぐり合えない貴重な体験を共有しました。

炭焼き窯で心地よく体を動かした後は、近隣の弥富(やどみ)地区へ。ここは約20 年前から地域を挙げてそばの栽培に取り組んでおり、県内有数規模のそばの産地です。休校中の小学校を活用したそば屋「龍の里 やどみ」もあり、地元の皆さんが腕をふるう手打ちそばも味わえます。

地区の公民館で皆さんが体験したのは” そば切り” で、弥富産のそば粉を使った十割そばの生地を延ばすところからスタート。同じ細さで均一に切るのに手こずり、中にはうどんのような太さになったものもありますが、自作のそばは格別。須佐唐津焼のうつわに盛り付けられた一杯は、皆さんにとって特別なものになりました。

その後は、近くの景勝地「畳ヶ淵」(たたみがふち)へ。河床に六角形の石が整然と並び、川岸には六角状の石の柱が垂直にのびた柱状節理も見られる珍しい場所です。これは約40 万年前の火山の噴火により生まれた地形で、その成り立ちをガイドさんに説明してもらいながら、周囲を散策。この土地ならではの自然が生んだ造形を堪能しました。

最後に開催された意見交流会では、さまざまなアイデアが挙げられました。まずは「キャンプ場のアクティビティを増やしてはどうか」という意見。豊かな自然と立地を活かしたカヌー体験やハイキング、夜の星の美しさに感動した方からは天体観測をすすめる声もありました。また、外国のキャンプでは” キャンプファイアーのそばで楽器を弾いて歌う”のが定番だそうで、楽器を置いてみては、という声が上がったのも国際色豊かな顔ぶれならでは。

そして「人を発信してみては」との意見も多く挙がりました。今回のツアーの案内人や講師の皆さん、キャンプ場のスタッフの皆さんなど、地元の方のキャラクターが印象的だったようで、そういった人たちとの交流拠点としてキャンプ場で定期的にイベントを開催してほしいとの声に「人も魅力になるというのは、新発見でした」と主催の尾田さん。

また「同窓会プランや女子会プランを提供しては」という提案もありました。帰省時期に合わせてキャンプ場で集まるプランがあれば、冬場の利用者が増えるきっかけになり、バーベキューなどのアクティビティや、コテージがあることで天候に開催が左右されにくいことも、イベント会場としての利点になると分かりました。

こうして2日間のプロジェクトを終え、キャンプ場スタッフの尾田さんは「さまざまな視点からの意見をいただくことができ、大きな収穫でした。そして、意外なことですが萩市内の方にキャンプ場の存在を周知できていないことも痛感しました。今回のアイデアを元に、積極的に地元の方にも魅力を伝えていきたいですね」と、新しい気づきにもつながりました。

実は、今回のプロジェクトに参加した市内在住の方が早速リピーターとなり、クリスマスにキャンプ場を利用するなど、地元への周知第一歩といえるできごとも!このプロジェクトを通じて生まれたアイデアの種はこれからも少しずつ芽を吹き、須佐湾エコロジーキャンプ場のさらなる進化へと繋がっていくはずです。

(実施時期:2022 年11 月12 日〜13 日  参加人数:8名)