地域の課題に寄り添ってきたから、コロナにうろたえることはなかった|発信キッチン(光市)

「米のおっぱい」プロデュースと「発信キッチン」オープン

 発信キッチンを立ち上げた増野睦子さんは、千葉県出身。東京から、ご主人の故郷である光市に夫婦で移り住むまでは、劇団員という異色の経歴をお持ちです。ちょうど、子どもが生まれるタイミングでの移住。最初は、ギャップに戸惑うこともあったが、楽しい生活だったそうです。

増野さんの転機は、株式会社農多(のーた)の米こうじで作られた甘酒に出会ったこと。「この甘酒を多くの人に知ってほしい」と商品プロデュースをお願いして、豆乳も加えた新たな甘酒ドリンク「米のおっぱい」を生み出したことです。「子どものために添加物や農薬を使っていない安心安全な食材を使いたい」というお母さんたちの気持ちが詰まった商品でもあります。

 その後、お母さんたちのグループで、光スポーツ公園内にあった空き店舗を活用し「発信キッチン」をオープンさせました。発信キッチンでは、安心安全な食材を使った食事の提供だけでなく、地元の無農薬野菜、食器、雑貨、洋服なども販売されています。どれも「自分たちが欲しいもの」にこだわった商品なのだそうです。

コロナ禍に動じることがなかった理由

 コロナ禍で、お店の状況はどうなったかを伺うと意外にも冷静な答えが返ってきました。
「テイクアウトは3年前からやっていたんです。毎週金曜日に『フライデーマーケット』を開催し、こだわりのパンや弁当、野菜や菓子などのテイクアウトを行っていました。だから、コロナ禍では、かなり早い段階で飲食は休業にし、テイクアウト中心に切り替えることができました。営業時間も当日の朝、予約をしたい方のためにスタッフの出勤時間を早めにするなどの工夫もしました」

 テイクアウトは小さな子どものいるお母さんたちには、もともとニーズがあったので、それに応えてきたのだそうです。
 新型コロナ感染拡大防止のために、テイクアウトだけでなく、電話を受けて商品を駐車場まで持っていくというサービスも始めたそうです。お店が公園の中にあり駐車場が広いためにできたことですが、テイクアウト待ちで密を作らない配慮がなされています。

お母さんたちが活躍

 売上面では、書き入れ時に歓送迎会などが一切なくなって、影響はあるけれど、2019年に登場した新商品、パンとスコーンのいいとこ取りをした食感が特徴のその名も「パコーン」の売上は絶好調。ネットショップでもよく売れていて、1日100個が完売。

 テイクアウトも大忙しで、これでお店が潰れてしまうというような危機感はなかったそうです。
「忙しくても、スタッフがイキイキしていたことは、力になりました。みな家庭を第一に生活するお母さんたちですが、それぞれが『デザート担当』『デザイン担当』といった形で得意分野をもち、活躍することで輝いている姿が、何よりの喜びになっています。

 コロナ禍では、地域の課題を考える上でとても勉強になりました。常連さんからの『がんばってね』という励ましは嬉しかったし、地域やお客さまの声に答えて地道にお店をやっていくとはどういうことなのか、身にしみて実感しました」

 いつだって問題や危機は起こってきたし、その都度、地域の課題に寄り添って乗り越えてきたので、コロナショックで揺れることはなかったようです。これからだって、何が起こるかわからないけれど、常にしなやかに動いてきた経験が、増野さんの何よりの力になっていると言えそうです。

危機を乗り越えてきた「発信キッチン」のこれから

 これまで、一番の危機は何だったのでしょうか?
「2018年の光豪雨災害。これが、今までで一番困った出来事ごとでした。川が氾濫して光スポーツ公園が立ち入り禁止になってしまったのです。お店は高い場所にあるので被害はなかったのですが、公園に入れなくなったので、お店までたどり着けません。本当に困りました」

 今後の展開について伺うと、何とも楽しみな答えが聞けました。
「発新商品の開発です。スタッフたちの女性ならではの視点で生まれる、ユニークで素敵なアイデアを形にしたいです。発信キッチンが光スポーツ公園というこの場所にあるからこそ『ここでしか食べられない』にこだわった新商品になる予定です!」

店舗名発信キッチン
住所山口県 光市大字光井540-1 光スポーツ公園内レストハウス1F
電話0833−72−7772
営業時間9時~16時(モーニング9時~11時 ランチ11時半~14時)
定休日月・火
ホームページ公式サイト https://www.hasshin-kitchen.com
オンラインストア https://hasshin-kitchen.stores.jp
Facebook https://www.facebook.com/hasshinkitchen