草衣so-iの始まり
東京で染色の仕事をしていた大道竜士さんが山口県防府市の富海地区に移住してきたのは2015年のことです。
「藍染をゼロからやっていきたいと思った」と大道さんは言います。地域おこし協力隊としての活動に励む傍ら、3年かけてコツコツ準備を進めてきた藍染工房「草衣 so-i」を2018年9月にオープンさせました。
仕事のスタイル
製作した洋服などを販売するだけでなく、気軽に染め物をお願いできる「紺屋」、織物や和紙の作家に素材を提供する「素材屋」など、様々な側面を持つ草衣so-i。山口県内で紺屋をしているところは他になく、大道さんに期待している取引先は少なくありません。
「毎日藍染に取り組めるようになったのは草衣so-iを開いてからで、試行錯誤しながら藍染を学んでいます。基本的に依頼を受けたら、例えそれがやったことのない仕事であっても断らない」という大道さん。失敗してしまったためお客さんに謝罪に行き、自身でまた新しく材料を買ってやり直したこともあるそうです。
「それでもお客さんが草衣so-iに仕事を依頼してくれるということは、『こんな紺屋が山口県にあったら良いな』と思ってくれているからこそ。『もっと技術が高くなってくれたら良いな』という思いからか、お客さんがいろいろ教えてもくれる」と嬉しそうに話してくれました。
対面へのこだわり
大道さんの仕事のスタイルは、とにかく対面でコミュニケーションをとること。「オンラインショップもやっていますが、写真と実物では感覚が違うため、お客さんには実際の商品に触れて選んでもらいたい」と言います。
そんな折、この度の新型コロナウイルスの影響で対面のスタイルが絶たれ、オンラインショップでの販売にウエイトを置かざるを得なくなりました。
「オンラインショップの売り上げは向上したものの、同時に限界も感じた」と大道さんは言います。「むしろ、生のコミュニケーションの良さが改めてわかった」というのが今回のコロナ禍による収穫だったようです。
常連のお客さんは、「対面でのやりとりができないならば」と、電話による注文や郵送での納品を提案してくれたそうです。不便をかけても「こんな時だから時間をかけて良いものを作れるだろう」と前向きな言葉で応援してくれる方もあり、草衣so-iの商売の面だけでなく、大道さんの気持ちも支えてくれました。
いくら通信技術が進歩しても、生身の人間同士のコミュニケーションを完全に補うことはできないと大道さんは考えます。コロナ禍は「自身のつくったものが売れる過程」を見直す機会にもなったようです。
田舎のコミュニティの良さ
住民同士のつながりが強い富海地区には、「助け合いの文化が根付いている」と大道さんは言います。家族がこのコミュニティに馴染むのに苦労はありませんでした。
生まれて間もない長男を連れ、初めての土地への移住とあれば心細さもありましたが、いざ飛び込んでみれば、地域全体で子どもを可愛がってくれたと言います。お互いに名前も顔も知っているコミュニティの中で、常に誰かが子どもを見守ってくれている安心感。子どもを育てる環境としては抜群です。
保育園に通う長男から発せられた「よして(=仲間に入れて)」という方言の意味が分からず困惑したと苦笑いする大道さん。子どもたちにとっての故郷とは山口県なのだと改めて感じた瞬間となりました。
大道さんと草衣so-iのこれから
藍染を中心とした大道さんの家業「草衣so-i」を表現する言葉は、「オーガニック」に尽きます。藍の有機栽培だけでなく、仕事の受注や販売、宣伝まで、大道さんの藍染に対する姿勢や信念に共感する人たちが有機的に繋がり、草衣so-iで染め上げられる藍染の価値や魅力を共有してきました。オンラインショップに欲しい商品がなければ諦めるしかありませんが、大道さんはギャラリーにないものも、お客さんとのコミュニケーションを通して希望の商品をイメージし、創り出すことができます。
あらゆる業種が、新型コロナウイルスのもたらした「新しい生活様式」に順応すべく、コミュニケーションのオンライン化を進める中で、大道さんは人と人とのオーガニックなつながりの強さを信じています。伝統的な技術・商売と最新のテクノロジー・ビジネスが有機的に結合した、ジャパン・ブルー(=藍色)に染まった未来を思い描きながら、大道さんの挑戦は続きます。
会社名 | 草衣so-i(そうい) |
住所 | 山口県防府市富海2666 |
連絡先 | 電話 080-5480-6264 メール daidoryuji@gmail.com |
営業時間 | 不定休のため電話にて問い合わせください。 |
ホームページ | オンラインショップ https://soi.theshop.jp Instagram https://www.instagram.com/so_._i |
草衣so-i・大道さんについて更に知りたい方は、以下も合わせてご覧ください(外部のサイトです)。
- 日々の暮らしをちょっと素敵に変えてくれる、小さな藍染工房(山口、暮らしの自由帳。ここいろ)