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宇部市小野・吉部地区では、10月に「第2の故郷づくりプロジェクト」の1回目が開催されました。今回は関東から2名、北九州から2名の20~30代の4名の方が参加。受入団体は、地域おこし協力隊のO Gを中心とした「うべ.com」です。代表・八代谷さんは神戸市出身。宇部市吉部地区で3年間地域おこし協力隊として活躍後、2年前にお弁当とキッチンカーの「kitchen 846(やしろ)」を起業。ビジネスに力を入れながら、関係人口や定住促進のプロジェクトも応援されています。
今回は大工さんと「木製ベンチ」を作り、地域の人だまりを創ろうというプロジェクト。参加の皆さんに非日常的な体験をしてもらいながら、思い入れのある『モノ』を作ること。その『モノ』に会うことが、再びこの場所を訪れるきっかけになるように。そしていつか参加者の皆さんが「自分の未来はこのままでいいのかな」と見つめ直す時に、ふと思い出せる「第2の故郷」のような場所になれたらという想いが込められています。小野・吉部地区で過ごした時間を思い出すと、懐かしくてほっとする…そんな心の拠り所のような場所づくりを目指したプロジェクトです。
3回に分けて行われるプロジェクトの第1回目は1泊2日の現地ツアーでした。2020年版「住みたい田舎」ベストランキング(人口10万人以上の大きなまち)総合部門で1位となるほど注目の宇部市。その最北部に位置する小野・吉部地区は少子高齢化が進むものの、明るく開放的な地域性もあり、旧小学校校舎を中心に多くのイベントが開催される活気のある地域となっています。
初日は簡単な自己紹介後、農業体験からスタート。主催の八代谷さんが地元農家に借りている畑での収穫体験の予定でしたが、1週間前にイノシシに荒らされほとんど収穫ができなくなったため、土づくりと玉ねぎの苗植えに変更。土づくりは初めてという参加者が多く、畑の土づくりがどれだけ大変なことかを知るきっかけとなりました。今回自ら植えた玉ねぎが収穫後に自宅に届くのを楽しみに、約1時間半の作業に汗を流しました。
昼食は、畑の近くにある地元の廃校を利用した「職員室カフェ」に。地元の食材をふんだんに使ったボリュームいっぱいのランチを囲んで、農作業後にほっと一息。改めて参加者同士の交流を深めた後、午後は写経体験に。現在は感染症の影響でお休みされていますが、民泊も受け入れている小野地区のお寺で、参加の皆さんは写経を夢中になって楽しみました。その後「坊主BAR」と題し、住職や小野地区に住む方、レストラン経営の方など、地域活性化のために尽力されている方々との交流会が行われました。地域の方々からの「今のままではいけない。移住までは行かなくても、ゲストとして時々訪れて新しい風を吹かせて欲しい」と中山間地区の危機感などのお話しを受け、参加の皆さんは「自分らしく応援できることがあるのではないか」という思いを強くしたようでした。
夜は星空鑑賞へ。当日は満月のため、満天の星空は次回へお預けに。それでも十分にキレイな夜空や自然に囲まれたこの地域ならではの澄んだ空気から、小野・吉部地区の魅力を感じることができました。その後、参加者は解散して昨年のプロジェクトで製作された木製ベッドのある施設などに宿泊しました。
2日目は朝からみんなで自炊をして朝ごはんを食べた後、東京から移住した方が廃校となった中学校舎を活用しオープンさせた施設「竹LABO」のオープニングイベントへ。施設をオープンさせた移住者のエネルギッシュなパワーや働き方、地域との繋がりを肌で感じ、田舎でもこんな風に活躍できることや、大きな施設を運営するチャンスを掴めることなど、さまざまな可能性を目の当たりにしました。またオープニングイベントに参加されていた地域の方々との交流も楽しむことができました。
ツアーのラストは、いままでのイベントでもいつも大好評だという“かまど炊きの羽釜ご飯”を堪能。吉部地区は宇部市内でも有名な米どころで、絶対に食べて欲しいと盛り込まれた企画です。かまどで炊くもちもちご飯はそれだけでごちそうに。「何回食べても美味しいって感じます」と八代谷さんは笑います。参加者の皆さんも、養鶏場に買いに行った朝どれ卵の卵かけご飯をメインに、おかわり2~3杯は楽しまれていました。
そんな中、いつもお世話になっている農家のお父さんが、ご好意でイノシシ用の柵を持ってきて下さったことから、急遽お父さんの指導のもと、イノシシの柵の設置作業を行うことになりました。プロジェクト企画当初は、たくさんの高齢者の方々とのふれあいを考えていましたが、感染症の影響もあり諦めていたところ、偶然のお父さんの登場は主催者側にとっても嬉しいハプニングとなりました。
「参加の皆さんに初めての経験をプレゼントできたことや、楽しかった、また来たいという言葉を聞けて本当に嬉しかったです」と八代谷さん。自身の活動のモチベーションは、シンプルに楽しいことしたいという気持ちだと言います。「いきなり移住はハードル高いので、スポットで関わってくれる人を増やしたいと思っています。小野・吉部地区のようなところは日本全国たくさんありますが、その中でこの地域とつながるということは、結局は人とつながることだと思うんです。宇部のあの人に会いに行こうって思ってくれる人をたくさん増やすのが目標です」。
八代谷さんには、1回目では伝えきれなかった魅力や、やりたいこと、伝えたいことがまだまだたくさんあるそうです。次回はオンラインによる木製ベンチのイメージの話し合いと近況報告会、3回目は再び小野・吉部地区に集合して実際に木製ベンチを作る予定です。
『せっかく出会えた縁だから途絶えさせずに繋がっていきたい』と言ってくれた参加の皆さんと、プロジェクトを超えた絆が生まれました。何かに疲れたとき、悩んだとき、『ただいま』『おかえり』といつでも帰って来られる場所の、シンボルとなるベンチが完成するのは、2022年3月の予定です。