〔レポート〕栗好きな人と繋がりたい!希少品種 岸根栗の産地を巡る美味しい2日間♪新しい商品づくりに向けてあなたのアイデア大募集!

プロジェクトの参加者募集時の情報はコチラ

 岩国市美和地区で、特産の岸根栗(がんねぐり)の新しい商品づくりを目的としたプロジェクトが実施され、関東を中心に岐阜、兵庫などから、ベーカリーオーナー、情報誌エディター、大学生など、個性あふれる19名の方が集まりました。主催団体は、岩国市出身で東京在住のメンバーで構成される「いわくにまるごとasoviva!」。代表・西村さんの同級生を中心に6年前に結成されたグループで、地元岩国の廃校を利用しての映画祭の企画運営、盆踊りのお手伝いなど、メンバーそれぞれの得意なことや、地元を離れているからこその視点を生かし、地域応援活動をされています。

 今回は、希少品種「岸根栗」が主役のプロジェクト。栗の親とも言われる歴史ある品種で、そのはじまりは850年前の源平合戦に由来すると言われ、通常の栗の1.5倍以上の大きさと香りと甘みの強さが特徴です。まだ知名度が低い岸根栗をもっとたくさんの人に食べて欲しい、知って欲しい、そしてこの栗が育つ地域と継続的に関わって欲しい、とこのプロジェクトは走り出しました。

 参加者の皆さんに五感を解放し、産地の風土を感じてもらうことを目的に、さまざまな体験を盛り込んだ1泊2日のツアー。1日目は観光栗園の栗の木の下に座り、接木の名人である 藤本園長 から栗と農園についてのお話を伺いました。本来ならお話を聞く間にも栗がポロポロと落ちてくるような場所ですが、今年は異常気象で例年の3割しか実らなかったとか。人間の力が及ばない自然相手のお仕事の大変さに耳を傾け、樹齢100年の栗の木や接木された若木などを見学し収穫体験をしました。その後、地域おこし協力隊の方や栗の加工所で働く方からもお話を伺い、地域を愛する気持ちや情熱をさらに深く知ることができました。

 夜は主催メンバーお手製の岸根栗のキーマカレーや渋皮煮、マロンピザ、お味噌汁などの栗づくしメニューと、美しいキャンドルを囲んでのキャンドルナイト。地域に住むプロのジャンベ奏者のライブを聴きながら、非日常な素敵な夜を過ごしました。宿泊は近くのゲストハウスでのんびり過ごす方、岩国の名所・錦帯橋へ移動し旅館へ宿泊する方など、それぞれのスタイルで岩国市での夜を満喫されました。

 翌日の朝は、パン職人でもある主催メンバーが先生となり参加者みんなでパンづくり。パンの焼き上がりまでの時間は、ワークショップへ向けて、お寺での写経や座禅、自分で点てたお抹茶を一服しながら、集中力を高め、心を整えていきました。

 その後、最後の企画として「世界(美和)を一歩深く味わうSeeingワークショップ」と題した、「見る目」の精度を変えるエクササイズワークショップが始まりました。講師の画家ユイ・ステファニーさんは訪れた地域で、聞いたもの、見たもの、触れたもの、感じたものから、作品を作っていくアーティスト。ユイさんは、この日の記憶が一つひとつ違う特別な思い出に残るようにと、参加の皆さんにそれぞれに異なるユイさん手作りのオリジナル白紙ノートをプレゼント。青空の下、屋外でのワークショップがスタートしました。

 ユイさん流の世界の美しさの紐解き方、見つけ方を聞いた後、まずは鉛筆が自分の体の一部だと感じられるように、白紙ノートに自由に線を描いていきました。鉛筆が自分の心と重なり自然と動くようになったら、今度は自分の手のひらを、小さな自分が歩いているようイメージしながら、離れたり近づいたりしながら、自分の手相を描いていきました。この時に大切なのは手のひらの溝や起伏を感じながらノートを見ずに描くこと。模写するのではなく、感覚だけをとらえていきます。絵が上手い下手など関係のない次元で、いろんな距離や角度から、感覚でモノをとらえるエクササイズをしました。

 その後、みんなで美和地域を散策しながら、自分が一番キレイだと思う「線」を見つける旅へ。参加者の皆さんは長く立ち止まったり、座ったり寝転んだりしながら、感じるままにさまざまな「線」を見つけていきました。山の稜線やくもの糸、虫の飛ぶ軌道など、感度をあげると美しいものがたくさん見つかるという体験に「新鮮で心が豊かになる気がした」と参加者からは喜びの声が聞かれました。主催の西村さんも「初めての場所で鳥の声や草木の香り、風の感触など、深く感度を高めながら、自分らしく地域のストーリーを受け取ってもらう企画でしたが、特に大学生のような若い世代が、このワークショップをきっかけに心を解放していく様子を感じられたことが本当に嬉しかったです」と振り返りました。

 ワークショップ後のアイデア発表では、栗バター、栗もなか、マロンキャラメルなどスイーツのアイデアレシピや、お灸や栗の渋皮染めなどへの活用、パッケージデザインなどの商品に関するものだけでなく、管理ができなくなった栗園のオーナー制や空き家の1ヶ月貸出しなど農園や地域資源の新しい活用案や、次回、美和地区でやってみたいことなど、本当にさまざまな意見が披露されました。参加者の皆さんは、各自A4サイズの紙にびっしりとアイデアや気づきを記入され、「いわくにまるごとasoviva!」の皆さんもその熱量に感動したそうです。

 おいしい岸根栗を知ってもらい加工するだけでなく、参加された皆さんが自分の視点で地域のバックグラウンドを深く見つめながら、一緒に地域のために前進したいと始まったプロジェクト。あくまでベクトルは地域の方向を向いていたい、商品は地域の方にとって持続可能なものであり、地域でも愛されるものであるべきということを最優先に考えると、急いで岸根栗の商品化を進めることは、地域の方にも、力を貸してくれる参加者の皆さんにとってもベストではないと考えるようになりました。
 1回目を終え、参加者の皆さんからの「想いの伝わるとても温かいツアーだった。体験型のコンテンツが多く大満足」「どんなに素敵な場所でも人の温かさに勝るものはないなと改めて感じた。人と人を繋げる場所になっている岩国が好きになってます」という声から、数回で商品化して終わるのではなく、もっと長いスパンで継続的につながっていく形にしたいという考えは一層強くなったようです。

 「プロジェクトは走り出しましたが、立ち止まったり、方向を変えたりするかもしれません。一緒にプロジェクトを進める仲間ともっと距離を縮めて、こんなことがやりたいなどの意見も吸い上げながら、主催グループのメンバーが東京にいることのメリットも最大限に活用し、東京の和菓子屋さんとの開発のコラボ、都内マルシェの出店など、さまざまな可能性も考えていきたいです」

 「いわくにまるごとasoviva!」の活動のシンボルとして主催イベントごとに飾られるのが、古着から作られたガーランド。洋服だった時の歴史をまとうカラフルで質感の違うフラッグがぶつかり合いながら、だけどひとつにまとまりながらはためくように、このプロジェクトもメンバーの得意や個性で相乗効果やイノベーションを生み出しながら、理想のゴールに向けしなやかに進んでいきます。